小さな編集長の雑感(限定版)

小さなメディアの編集長が、仕事や働き方の気づきを書き留めるブログ。限定版。

モチベーションを高める、企画の生み出し方

メディアを運営していて、もっとも大事なプロセスに「編集会議」があります。それぞれの編集者がテーマに沿って企画を持ち寄り、何を進め、何をやめるのか。編集者にとってまさに自身の仕事の生き死ににつながる戦いの場でもあったりします。

ありがたいことに最近、いろんなメディアの編集会議に参加させていただいたり、某有名な編集長とお話をしている際に「編集会議」の進め方によって、メディアの色の違いが出ることに気づきを得てきたので、今日は中でも自分が「この視点は大事にしたい」と思えた編集会議のお話をしたいと思います。

イデアが拡張しない「編集会議」の特徴:
先にこれはいまいちだな、と思う編集会議からお伝えすると、各々の企画持ち込み者が、自身の企画を全力に通そうとする編集会議です。Aさんは、Aの企画が最高だという。Bさんは、Bの企画が最高だという。Cさんは、Cの企画が最高だという。だから、Aさんの企画に対して、他者は粗を探しに入る。それは考慮されていない部分を洗い出す、という行為よりも企画の減点ポイントを探る。いつの間にか、Aさんの起案は丸みを帯び、仮に起案が通ったとしても大して面白くもなく、読者にも刺さらない企画となる。多かれ少なかれ、だいたいこんなストーリーがあります。チーム内で、対立軸が生まれてしまうケースです。

イデアが拡張する「編集会議」の特徴:
では、編集者がモチベーションを高める企画はどのように生み出されるのか。最初は、それぞれの持ち込み企画であることは前者と同様です。しかし、編集会議の内容が異なります。

それは、その企画がもっと面白くなるために様々なアイデアを積み重ねていくというもの。口癖のようにいう言葉があります。

「いいですねぇ」
「あと、何かもうひとひねり、ないですか?」

企画がいい!と言われて、悪い気になる編集者はいません。さらにひとひねりする。参加する人たちがまたそのアイデアを拡張する意見をいう。「こんな観点から、○○というのはどうだろうか?」とか。

Aさんの企画、Bさんの企画、Cさんの企画は、いつの間にかそれぞれの企画が軸となり、D案、E案、F案などに生まれ変わっていく。実はここに圧倒的ユニークな企画が眠っています。

さて、ここからが本題です。

なぜ、このような企画手法が優れているのか。圧倒的に違うのは、編集者のモチベーションです。Aさんの企画が通った場合、Aさんの企画をカタチにすることになったBさん、Cさんのモチベーションがあがりません。一方で、後者の場合、D案といったみなの議論で生まれた企画に大しては、みなが「自分が起案した」「自分の企画だ」と思っているところがあります。企画が自分ごと化します。

クリエイティブな仕事にとって、モチベーションはアウトプットに大きく影響を与えます。だからこそ、編集者のモチベーションをどうサポートするのか、というのは編集をリードする人間の大切な役割であり、スキルです。

これ、某有名な編集長の方からいただいたお話で、アイデアの拡張を意識しながら物事を進めるとチーム全体のクリエイティブを遺憾なく発揮できるということで自分も意識している手法です。興味がある方はぜひ、お試しあれ。

とはいえ、簡単にこうした編集会議の文化をつくることもできないですし、また編集長が独自の判断しなければならないこともあるので、そのことはまた別途カタチにしたいと思います。

ではでは。