小さな編集長の雑感(限定版)

小さなメディアの編集長が、仕事や働き方の気づきを書き留めるブログ。限定版。

仕事の欲は、仕事によって芽生えるといったある俳優の話

以前、ある男性俳優を取材させていただく機会がありました。その方は20代でモデル出身の俳優さんです。いまでは、連ドラ、映画に活躍しており、Q(クオーター)でみないことはないというぐらいの人気俳優です。

ふとTVを見ていてその俳優さんが興味深いことを言っていたのを思い出したので、記載します。俳優さんの名前はここでは伏せます。仮名を「Aさん」とします。

話のテーマは「欲」です。

欲と聞くと、悪いイメージを持ちやすいのではないでしょうか。欲望、欲求など、それを満たすために何らかの行動・手段を取りたいと思わせ、それが満たされたときには快を感じる感覚。動物的ですね。

仕事場では、欲を出せ、というより「欲を抑える」ことが多いのではないでしょうか。一般的にも仕事場で欲を出せ、とは表向きに聞かない話だと思います。

しかし、このAさんは元々は欲がなかったのが、欲がでてきたからこそ、自分は変われたといいます。欲は悪いものではない。欲こそが、ひとを変えるものだ、と。

ストーリーはこうです。

従来、モデル出身の俳優の為、芝居をはじめたばかりのときは熱を入れることができなかったんだそうです。しかし、まずは覚悟を決めて、どんな種の仕事でも対応していったそうです。言葉を借りると「我を見失う量」だったとか。転機はすぐに訪れます。連続放映の主役に抜擢されたんです。それで、仕事への向き合い方が変わったんだとか。

「演技を器用にできないだけに絞り込みたい」
「俳優に向いていてほしいけど、いちども「向いている」と思ったことがない」
「いろんなことに目が向くと、続けられない。だから、絞る」
「ずっと続けていけるのが、俳優という仕事。だから、逃げない」

そんな想いによって、つくられたひとつの作品。Aさんはそこから俳優としての欲が生まれたといいます。

「○○○さん(有名監督の名前)の作品に出たくなったんですよ」
「○○○さん(某有名な俳優の名前)といっしょに競演したくなった」

次から次へと生まれる欲。
従来、俳優への熱がなかったAさんが、ひとつの作品によって、欲が芽生えたそうです。

作品が残る →欲が生まれる →モチベーションがあがる

この連鎖によって、俳優としての階段を上っていったそうです。この後は、ドラマ、映画だけでなく、舞台にも挑戦。TVは映像が細切れでカットされるので、カットごとの集中と瞬発力がものをいうそうですが、舞台はカットで切れることがない。連続性のなかで、いかにお客さまに自身の演技を受け入れてもらうのか。それが精神の鍛錬につながったんだとか。

欲が出ると、もっと次の場を得たくなる。そして、Aさんはいいました。

「欲があるのならば、出し惜しみせずにさっさと出すこと」
「それが、臆するコトのないアクションにつながります」

う〜ん、20代の若手俳優の言葉に唸る自分。この取材から2年。Aさんは当時から飛躍的にキャリアステップを踏んで、連ドラ主役まで張っています。有言実行している彼をTVで見るたびに、当時の取材が思い出されます。

最後に彼は言いました。

「欲を持つということは、逆に捨てること」
「捨てる覚悟をもたないと欲は生まれません」