労働人口減少というけど、どれだけ減るのか。そして、どう対処すべきなのか。
仕事柄、厚労省や各種シンクタンクから発表される資料に目を通すことが多いのですが、先日、経産省から出ていた「21世紀からの日本への問いかけ」を掻い摘んで説明したところ、非常にわかりやすいという評価をいただきました。
そこで今回も各種シンクタンクから発表されている資料について「ざっくり言うと」という風味でポイントを紹介したいと思います。
今日紹介するのは、パーソル総合研究所が2016年6月に発表した「労働市場の未来推計2016」です。
■サマリー:
→2025年に約600万人の労働力が国内で不足する懸念あり
→とくに労働力が不足する懸念が大きいのは「情報通信・サービス業」
→2016年時点の有効求人数248万人に比較し、約2倍以上の不足に
→逆に過剰とされるのは「政府サービス 246万人」
約600万人の労働力が不足する、というけど、600万人というのはどれぐらいなのか。
近い数字は、千葉県の人口「6,222,666」。千葉県の全人口分の労働力が国内で不足するという懸念があるということです。こう考えると労働力不足の深刻化が理解できます。
では、どのようにこの労働力不足を解消しようというのか。
主に注目されるのが、下記の4つ。
1.はたらく女性を増やす +350万人
2.はたらくシニアを増やす +167万人
3.外国人労働者を増やす +34万人
4.生産性を向上させる ー114万人
女性の労働参加は、M字カーブの解消になります。これがスウェーデンと同様のレベルまで改善できれば、350万人の労働力を確保することができます。
シニアの参加も必須です。実は、60歳以上になっても7割が働き続けたいという希望をもっており、65歳〜69歳のシニアが60〜64歳のシニアと同じぐらい働けるようになるだけで、167万人の労働力確保になります。
外国人労働者は、2015年時よりも2倍になれば、34万人の労働力確保です。
生産性については、1時間あたりの労働生産性の伸び率を0.9から1.3に伸ばせば、114万人の必要となる人手がなくなることになります。節約ですね。
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実はざっと数字を見る限り、いちばんインパクトが大きいのは「女性の活躍」になります。とくに30〜40代という最もバリバリ働ける期間となるため、国を挙げて女性の活躍を支援しようとしている背景がここにあります。
シニアの労働力も十分期待できますが、必ずしも新しい産業に即した人材であるのかは不透明です。ですから、国全体を見据えた上での「最適な人材配置」をもっと考えなければなりません。ここが解雇規制や副業/兼業モデルを導入しようとする背景だったりします。おそらく1月の臨時国会においても「働き方改革」は大きな話題になるはずです。
海外労働は、実は女性やシニアほど、インパクトはありません。また、実は隣の国、中国において、2017年以降は労働力不足に陥るといわれています。一人っ子政策の弊害ですね。若い働き手がいないのです。となると、何が起きるのかというと、海外労働者の獲得競争が起きます。ここにおいて、賃金もそうですし、法的整備も追いついていないというのが現状です。
生産性については、「長時間労働」撲滅の機運からいっきに注目度があがってきました。AIやIot技術の導入やHRテックによる最適な人材配置による個々のベストパフォーマンスの追求です。ここは企業努力によって十分可能ですし、細かいことをいえば、MTGや資料作成の無駄など、個人でもできることが十分ある領域です。
また先日も書きましたが、週休1日から週休2日はなぜ、起きたのか。はじめたのは民間企業の松下電器産業です。松下電器産業の故松下幸之助氏が海外を視察し「量より質」を目の当たりにして、休みの1日を休養、休みの1日を教養とする、としたのがはじまりといわれています。ひるがえって、もっと生産性をあげるのであれば、社会人の学習効率をあげていかなければなりません。
最後に。
女性の活躍推進がもっともインパクトがあるといいましたが、実はもうひとつインパクトを与えるであろう事実があります。それが「介護問題」です。2017年以降、親の介護が次々と顕在化し、企業の中間管理職というもっとも大事なポジションの人たちの労働に影響を与えるといわれています。そのため、危機感のある企業ほど、テレワークなど、対策を講じており、この介護問題の強制力によって、女性のM字カーブの解消も期待されていたりします。
こうやって考えると、働き方改革は待ったなしの状態。
一人ひとりがより良い働き方を追求しなければならない時代がすぐそこにあります。
ということで、簡単にレポート内容を紹介してきました。政府機関、各民間シンクタンクでも働き方に関するさまざまなレポートがでてきています。今後は注目度の高い資料について、「ざっくりいうと」シリーズでお届けしたいと思います。