小さな編集長の雑感(限定版)

小さなメディアの編集長が、仕事や働き方の気づきを書き留めるブログ。限定版。

人を動かすならば、まずは「仕組み」からという話

12日のTV番組「カンブリア宮殿」の特集が働き方改革でした。働くをテーマにするこのブログでもこの番組内容を取り上げないわけにはいきません。

www.tv-tokyo.co.jp

 

働き方改革の実例で出てきたのは、SCSK社 と ソウ・エクスペリエンス社。この中でも気になる事例について紹介したいと思っています。

長時間労働の是正:
残業を減らしたら、残業代を払う「スマートワークチャレンジ20」
年間有給休暇20日、月間平均残業時間20時間未満を目指したプロジェクト。長時間労働是正の場合、現場に対して「残業を減らせ」と号令し、強引に進めた結果、メンバーは早帰り、管理職はその分を請け負うカタチとなり、プレイングマネジャー化し、チームの教育が行き渡らなくなり、組織全体のパフォーマンスが落ちる、という話を聞きます。しかし、これを仕組みと時間軸の考えを置いて、解決していました。

残業代がないと、生活が成り立たない という社員の言葉。

生活を成り立たせるために残業する、というのは一見するとおかしな話です。しかし、そこに経営は真摯に応えた。部門ごとの残業時間削減の達成度合いに応じて、賞与などに上積みする仕組みを導入。TVで登場した女性は、約10万円程度上積みされていました。

残業を減らしたら、差分を社員に還元するというおかしな施策ですが、社員のモチベーションを落とさずに、働き方改革を進めるという意味でうまい仕組みです。またそれをずっと続けるのではなく、「習慣を身につけてから、裁量労働制を拡大する」こともしています。基幹職は、34時間分の残業手当を。それ以外は20時間分の残業手当分を裁量労働制の範囲で支給しているそうです日経ビジネスより)

まずは、残業しない習慣を身につけてから。
そして、その習慣が定着したら、裁量労働制に。
仕組みと文化醸成、制度をうまく噛み合わせたよい事例だなぁと思いました。
ちなみに、SCSK社全体の残業時間は、15年度で約20時間だそうです。

プチ子育てを経験する仕組み
ソウ・エクスペリエンス社の事例。子どもを連れて、会社出勤してもOK。放送内では、他人の子どものおむつ換えをする女性社員がいて、ディレクターの「大変ではないですか?」との質問に笑顔で「楽しんでいます」と応えていました。

個人的に、この仕組みは秀逸だと思っています。
プチ育児をすることで、子どもがいる家庭の負荷を社員全員が理解できるからです。自分も親になってわかったのですが、独身、とくに男性には子育ての大変さがわかりません。その理解が進むことで、社員の生活という背景まで気遣った対応ができるようになります。

男性管理職の“家庭内インターンシップ”を提供するスリール株式会社の堀江さんの話を伺ったことがあるのですが、独身男性管理職が育児を経験するとコミュニケーションが劇的に変わるとおっしゃっていました。ダイバーシティが進む組織の中で、社内で見える範囲だけでなく、社員の生活という見えない範囲まで理解が進むことは、組織文化の醸成に大いに役立つのではないか、と思っています。

drive.media

 

そんなことで、売上を落とさず、会社として損をしないで、生産性をあげ、利益を生むよい事例が詰まった番組でした。

まずは、社員の声を聞く。都合の悪い声にも耳を傾ける。そして、

「仕組み」で、まずは行動に変化を起こし、社員の習慣を変える。
「習慣」で、組織の文化を変える。
「文化」で、生産性をあげ、利益を生む。
「利益」で、さらに仕組みを変えていく。


一方で「では、自社でも同様の施策を!」となりがちですが、そもそものビジネスモデルの違い、社員の質(意識とか、ビジネススキルとか、モラルとか)の違いなど、前提が異なるので、うまくいかないでしょう。自社に合った働き方改革を社員といっしょに考え、行動できることが、いちばんの近道でしょう。

最後に。
働き方改革の話では「自社では無理」と最初から拒絶反応があるのですが、大抵が「やれば、できる」んです。そして、上記のプロセスは実は社内だけでなく、マーケットへのサービスでも同様のことがいえます。自社の働き方すら変えられない企業は今後の変化の時代に生き残るのは不可能ではないでしょうか。